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MM体験記第弐拾壱回  

メタルマックス体験記第弐拾壱回です。(ゴメスのアジト)

※今回の内容はゲーム内でもネタバレ度が非常に強いのでネタバレが嫌な方は
閲覧をご遠慮くださるようお願いします…!



イーデンを北に進み、山脈のふもとをぐるりと旋回して亀裂地帯を抜ければ、
そこは大きな滝が見える山地だった。
ドドドドと滝が流れる大きな音がインカムの会話を遮断する。
とりあえずオレが戦車を先行させることにより行くぞ、と2人を誘導させる。
だけどその時またしても地震が起こった。
最近本当に頻繁だな…リオラドは大丈夫なのか?
それにしてもこの滝つぼ…、落ちたら一巻の終わりだろうな。
まず道が広いから落ちることは無いけれども。


道なりに進むと建物が見えた。もしかして、ここがゴメスのアジトか…??
だけど様子がおかしい。建物から煙が立っている。焚き火…は今時無いよな。
…となると、まさかウルフの仕業だろうか。
柵で囲まれたアジトに入れば、そこはまさに地獄とも言うべき光景が広がっていた。

「うわ……」

思わず声を漏らしてしまう。
いきなり死体が転がっていたからだ。どれも、無残で、グロテスク…
一応モンスターの不気味な姿は見慣れてるけどさすがにこれはキツい。
見る限りだと全て砲撃を浴びたような焼死体。
人間用の武器でここまで酷い損傷は与えられない。

それができるのは戦車による砲撃だけだ。

建物の影でしゃがみこんで震えている男を見つけたので戦車を降りて声をかけると、
男はヒィ、と短く叫んで腰を抜かしながらオレに涙目で助けを求めてくる。

「ま、真っ赤な戦車に乗った、賞金首がっ…!!!
 赤い悪魔が来たんだ……!!助けてくれぇっ!」

その時ドォン、と低い砲撃音。きっとウルフがゴメスと交戦しているに違いない。
反射的に足が動き、オレは武器を手にしながら音がした建物へ走って行った。

「はんた!!」

あんじゅが後ろから叫んでいたけどオレは構わず走った。
そして古びたガレージの入り口の傍で立ち止まり顔だけ覗かせると、

「…っ!!!」

オレの目に映ったのは………













赤い戦車の下で横たわる血塗れたウルフだった。






どうしてウルフがレッドウルフに乗っていないのか、
どうしてこんな惨い姿になっているのか、全くわからない。
そしてそのウルフの頭に今すぐにでもハンマーを振るおうとしている男…
賞金首“ゴメス”だ!

「ウルフっ!!」

超音波砲を構え屋内へ突入すると、突然の侵入者にゴメスはハッとこちらを見た。
あちこちを金属類で纏っていて、ガタイはずっしりとしてる40過ぎのオッサン。
その体格だからあの大きなハンマーを振るえるんだろうな…
よく見るとウルフの傍には女の人もいた。
もしかしてウルフが探していた人はこの人なのか?
…いや、違うな。表情が悲しみを帯びていない。ゴメスとグルだろう。

「なんだ貴様!まさかこのわしを倒そうなんて考えとるのか?」

ハンマーを肩に乗せゴメスがにやっと笑う。
ウルフの仲間とでも思っているんだろうか。本当はオレの意志で来たんだけどな。
血まみれでぴくりとも動かないウルフに視線を下ろし、そしてゴメスに目線を
戻すと再度超音波砲を構え、怒りに震える声で叫ぶ。

「よくもウルフを!!許さねえっ!!!」

標準を合わせ超音波を放ったけどあんなに重そうなハンマーを抱えているにも関わらず
ゴメスはたやすくオレの攻撃をかわした。嘘だろ!?超音波の波動は速いのに…!
そして…

「甘ぇなあ、小僧!!!」
「!!!!!」

あっという間にオレの目の前に迫ってきたゴメスは、その凶器を思い切り振り回してきた!
オレの身体はゴメスの攻撃に反応しきれず中途半端な防御の姿勢のまま
左側からぶん殴られ、建物の外へと吹っ飛ばされる。
すぐに立ち上がろうとしたけど左半身に激しい痛みが走り、うつ伏せに倒れこんだ。
ズキズキとあちこちが痛み、思わず変なうめき声が出た。

「う……ぐっ………」

左腕が動かない。いや、左半身に鈍い痛みが走ってまともに動いてくれない。
そこへ追い討ちをかけるようにキャラピラ音が近づいて来る。
あいつ…戦車を持っていやがったのか!そして生身のウルフを…??
身体の自由が利かないため、耳を傾けることでしか背後の状況を把握できないけど、
ハッチを開けた音の後にゴメスのだみ声が聞こえた。

「うわははははは!あのレッドウルフさえ敵わなかったこのわしに勝てると思うのか!
 そのままあの世へ送ってやる!レッドウルフと一緒にな!!!」

ゴメスの戦車の主砲がガチャン、と音を立て倒れて動けないオレへと向けられたようだ。
逃げないと、モスキートに乗って反撃の準備をしないと。
でも…身体は言う事を聞いてくれない!少しの間必死にもがいていたけど、
懸命に前へ突き出そうとしていた右腕も、
頑なに動かそうとした左腕も、力尽きて地に落ちた。
バイオニックポチに喰われそうになった時と同じ、
生きる事を諦めた脱力感がオレの身体を支配する。





ウルフ…!!








「これ以上はんたに手を出したら許さないよ!!!」

あんじゅの叫び声と同時に徹甲弾が発射される音が聞こえ、
戦車に直撃してバァン、と大きな衝撃音を生み出した。
ハッと反射的に顔を上げるとそこにはあんじゅのバンとミッキーのパンサーが
ゴメスに向かって主砲を向けていた。

「ちぃぃ、仲間がいやがったとはな!まとめて相手してやる!!」
「はんた君!今の内に回復カプセルを使って!」

そう言いながらミッキーは煙幕弾を撃ち、ゴメスの視界を煙で遮っている間に
オレは腰のポシェットから回復カプセルを取り出し、飲み込んだ。
痛みは引いたけど左腕はだらりと垂れたまま動かない。くそっ、折れたか…!
でもなんとか立ち上がることはできたのでモスキートの元へ走り、乗り込む。

「ウルフの仇だ…覚悟しやがれ!!!」

右腕だけで戦車を操作しながらオレは特殊砲弾、ホロチャージを撃ち込んだ。
かなり威力の高い特殊砲弾。こういう時のために買い溜めしていたんだ。
ホロチャージと徹甲弾で徹底的に戦車を攻撃すると、
やがて戦車がもたなくなったのかゴメスが戦車から降りてきた。
あの大きなハンマーを持ちズシンと地に着陸する。

「このわしをここまで苦戦させるとはな。だがこのまま勝てると思うなよ!」
「ちっ、待て!!」

ゴメスは戦車を置いてアジトの外へと逃げ出した。
あの野郎、逃がすかよ!絶対にウルフの仇を取ってやる!!
オレは舌打ちをしてすぐに後を追い、その先は滝つぼの前。アジトに来る前に通った場所だ。
ゴメスはそこでハンマーを持ち待ち構えていた。それも不敵な笑みを浮かべた顔で。
ここで決戦、というわけか。
2人に命令を出そうとしたけど滝の大きな音に通信手段を
封じられたことに気が付き再び舌打ちをする。

「ま…、さか……こい…、こを狙………、!」

ミッキーの声がかすかに聞こえる。これじゃ互いに連携が取れないな。
とにかく3人で攻撃を仕掛ければいいだけのことだ、と
オレは再びホロチャージでゴメスを狙う。
レーダーを確認しながら二人の戦車と共にゴメスを執拗に狙い続けたけどなかなか
ゴメスに攻撃が当たらない。砲弾を見切っていやがるのか…!?
悔しいけど高額の賞金をかけられてるだけあるな…。
それに片腕だけの操作もなかなかしんどい。動きが鈍いのも原因かもしれないな。

「そらそらぁ!」
「うぁっ!?」

突然モスキートがドスゥン、と揺れた。何かの力でシャシーが後ろへと動かされている。
まさか、ゴメスのハンマーなのか!?
こっちは戦車なのに…どういう馬鹿力してやがるんだ!!
させるかとレバーを引いて抵抗するけどあっちの力の方が勝っているのか、
オレの戦車はどんどん崖へと押し込まれて行く。
ミッキーがオレの名前を呼んでいる気がするけどそれどころじゃない…!!!
痛む左腕も添えてなんとか戦車を動かそうとしてもモスキートは
ズルズルと滝つぼへと誘導される。くっ、お、落とされる…!
モスキートから離脱できればなんとかなりそうだけど、レバーを押さえ込まないと
あいつのハンマーに一気に押し込まれてしまいそうだ。
グググ、と力が入るたびに左腕から生ぬるい血が流れる。
あのハンマー、トゲついてたもんな…と、変に落ち着いたところで
ちょっとした抵抗手段を思いついた。
主砲の向きを明後日の方向へ。
そしてホロチャージを発射させた。

「ぬおぉ!?」

ホロチャージの発射する反動でゴメスを戦車から強引に引き剥がす。
すぐにレバーを引き直して崖から離れると、ほぼ至近距離といってもいいぐらいの
場所から受身を取り損ねスッ転んでいたゴメスに向かって再度ホロチャージを撃った。

「ぐわああああああああぁぁぁぁぁ………」

ホロチャージをモロに受けたゴメスは爆風と共に滝つぼへと落下した。
これならもう助からないだろう。


これで、ウルフの仇はとった。


3人共戦車から降り、互いに無事を確認する。
…と言ってもオレの左腕は折れちまったようだけど。
2人はそれを見て目を丸くしていたけどオレの頭の中はそれどころじゃなかった。

「はんたっ!すぐに腕を固定しないと」
「いや、それよりウルフの所に行かせてくれ!」
「わっ、ちょっと、はんた君!」

左腕からまだ血が出てることも構わず再びウルフが倒れていた建物の中へと戻ると、
さっきゴメスといた女がオレ達を待っていた。どうやらゴメスがオレ達を倒すことを待っていたようで
期待を裏切られた現実に顔を青ざめさせている。やっぱりグルだな、こいつも…

「ち、違うんだよ!アタシはあの男に脅かされて…っ」
「黙れ」

オレはそれだけ言うと超音波砲を女に向ける。
目の前の無機質で無慈悲な凶器にひっ、と女は短い悲鳴を上げてすくみ上がった。
本当はこんな事するべきじゃないんだろうけどウルフのあの姿を見たら
あんな事をしたゴメスと共謀した女も許せなかった。

「ここまでの経緯を…話してもらおうか」

今すぐにでも右手のトリガーを引きたかったけど、
ウルフに何があったのかを聞かないと気が済まない。
正直に言え、と噴出口を女の顔へ近づけると怯えながら首を縦に振り口を開いた。


女の話によると、ウルフはとある女性を探していたらしい。
そしてここへ来たときこの女がウルフの探している人になりすまし、
ウルフが戦車から降りて油断したところを戦車に乗ったゴメスが襲い掛かり…
今に至る。…くそっ!!!卑怯な奴だ!
女はまだ自分は悪くないと否定し続ける。
そんな無様な姿に何かがブチ切れそうだった。


「だからね、アタシは…」
「もういい!!とっとと消え失せろ!」

自分の出せる限りの音量で女に怒号を浴びせると女は悲鳴を上げながら逃げて行った。
そしてこの建物内は静寂に包まれた。
戦車と同じ、赤に染まって倒れているウルフ。
もう、この傷じゃ…。










「……ごほっ!」
「ウルフ!?」

わずかに息がある。身体を起こしてやろうとしたけど左腕に激痛が走り、
顔を歪めたオレを見たあんじゅが代わりにウルフの背中を支えてくれた。
うつ伏せに倒れていたから身体が起こされた事によって腹部の大きな傷が露になり、
その酷さにオレは思わず眉間に皺を寄せかがみ込んでウルフに話しかける。

「ウルフ、ウルフ…っ」

何度も名前を呼ぶと、ウルフの弱弱しい瞳がオレを捉えた。
そしてゼエゼエと呼吸しながらか細い声で少しずつ喋り始める。

「お前は………いつかの………。なぜ、ここ…に…?」
「アンタを追って来たんだ。ずっと…」

ウルフは酷い傷を負っているにも関わらずいつもと同じあのニヒルな笑みを浮かべる。
オレの隣ではミッキーが沈痛な表情でウルフの言葉を静かに聞いていた。
いつもならすぐ手当てをするはずのミッキーが動かないということは、
あいつはもう理解しているんだ。この傷の深さを。
本人も自覚しているのか、虚ろな目でウルフはぼうっと天を眺めた。

「フッ…レッドウルフとも、あろうものが……、ざまあねえ、な…」
「まだアタイとの勝負が着いてないじゃないのっ!
 こんな所で逃げるなんて…許さないよ!」


あんじゅがウルフを支えながら叫ぶ。その目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
お前…なんだかんだで優しいんだな。それともウルフの事を…?
後ろから聞こえた罵声にウルフは首を少しだけあんじゅに向けてまたフッ、と笑う。

「ふふふ…可愛い子犬が………、相変わらず…よく吠えて…や、がる…」

ゲホゲホと咳き込み、その度に服に血がこびりついていく。
それでもウルフは自分の愛車…レッドウルフを見上げ、オレの顔に視線を移した。
そして微かな声でそれを紡ぐ。その言葉はオレの何かを揺さぶらせた。

「オレの……戦車に……乗って、くれないか……“はんた”
「!!!!!」


ウルフが、オレの名前を…??


その一言にオレは目を丸くした。ウルフに名を名乗った事が無いのに…?
何にも例えられない感情が自分の心の底から溢れてくるのを感じて身体が震えだし、
無意識に右腕がウルフのボロボロになった左手を掴んだ。

「どう、して……オレの…名前を…?」

震える声でウルフに尋ねた。自分の声が震えていると同時に、
頬が濡れている事にも気が付いた。
止まらない感情の波。
アゴからはたはたとそれが落ちてもオレはウルフから視線を逸らさなかった。
でも心の中では、この感情を心底嫌悪して反発していた。



嫌だ、嫌だ…前も、こんな感情に溺れたことがあるのに…!



ウルフはオレの問いに答えなかった。いや、もう答える気力も無かったんだろう。
反射的に聞いてしまったけど理由はうっすらとわかった。
オレも数々の賞金首を倒してきた。
その話がもしかしたらウルフの耳にも届いていたのかもしれない。
オレみたいな田舎上がりのハンターの名前を、
憧れのハンターは知ってくれた。見ていてくれた。


でも。
それに気が付いた今、ウルフはその目を閉じようとしている。
最期に、ウルフは力を振り絞ってオレにある事を伝えた。

「…どこかで、“ニーナ”という女を見か、けたら……
 ウルフは昔の、女のことなど…もう、忘れた……、と…伝えてくれ…」

「……わかった…、約束する…よ…」

オレはウルフの左手をぎゅっと握った。その手はもう冷たくなってきている。
ウルフを迎えようとしている、“あの時”が、近づいているんだ。












「あばよ………、ツ イ て た な … … 」

















ウルフの首がカクン、とあんじゅの腕に圧し掛かった。

あんじゅは顔を伏せ、ミッキーは目を逸らし、そしてオレは…。


「うわあああああああああっ!!!!」


ウルフに訪れた“死”に天へ向かって泣き叫んだ。

















オレは、大切な人を失った。


自分が追い続けていた、憧れていたハンター。


その悲しみは、


母さんを病で亡くして以来だった…。









ガチでボロ泣きしたレッドウルフイベントでした…。
ゴメスとの戦いの前に本当は女が供述したシーンが入るのですがあれを見せられて
助けに行かないわけが無いので回想として入れました。
そしてゴメスとのバトルは完全にオリジナルです。はんた単身で挑むわけはありません。
あとインカム自体がオリジナルっぽいので滝つぼ傍での戦いはあまりの轟音に
通信できないとか勝手なことをしでかしてすみません。
SFCのリターンズでもこれを確認して気付いたのですが主人公の名前を呼んでくれるのは
FC版だけのようでした。今まで呼んでくれたことなかったのに…!と、ここで号泣しました。
きっとはんたの活躍をハンターオフィスなどで聞いていたんだな、と思うと
その想いがようやくわかったのにウルフが瀕死だなんて惨すぎる運命。
この次の展開は完全オリジナル(というかEDの一部が入ります)なのでご注意下さい。


憧れのハンターを失ったはんた。赤い戦車の魂を受け継げるのか!

次回を待て!!

category: 特別体験記(MM)

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