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小噺弐『亀心』  

37話後の紫メインなお話。
ただちょっとおセンチ入ってるので湿気臭いのが嫌な方はご遠慮をば。


「エイプリル、一緒に来てくれる?」
「おい!あのオタク亀、デートの相手を奪いやがった!」

急いでたからその時は全然気にしていなかったけど、
その言葉を反芻してみると、妙に胸が痛かった。




ナノロボットの2度目の撃退。
それは1度目と同じすっきりとしない結末だった。
結局ナノロボットは再び分解され最後に父の目の前で消失。
ドナテロの言う通り、持つ親が悪かったのだろうとレオナルドは思う。
あの事件の数日後、エイプリルは褒賞金で失くした店を再建させて我が家を去った。
暗い下水道での生活はさぞかし不便だったに違いない。

でも、それから我が家はいつもより幾分か静かになった。
ラファエロとミケランジェロの喧騒は絶えないのに足りない何か。
時にやかましくこだまする機械音が聞こえなくなってしまったのである。
今日も特に何かをいじるわけでもなく広い居間を去る後姿と、
ゆらゆらとたなびく紫のハチマキが闇に溶け込んでゆく。
それを見る度に一体どうしたものだろうかと兄弟は顔を見合わせた。



ドナテロは自分の部屋に入るとおもむろにパソコンを開いた。
居間にもパソコンはあるがあくまでこれは自分用。
勿論パソコンを彼以外に使いこなせるのはエイプリルぐらいであろうが。
起動させガリガリと音を立てる画面の前でドナテロはずっと考えていた。

自分は一体何をしているのか。

どうしてこうなったのか。

どうしたらこの状態から元に戻れるのか。

全てを理解できているはずなのに、最後に何かが引っかかって答えを出せない。
しかも、その「何か」という正体がわかっているにも関わらず結論を下せない自分に
ドナテロは深く悩んでいた。


パソコンの起動音が静かになってきた頃、ひたひたと部屋に近づく
誰かの気配を感じ取った。ゆっくりとそれを分析する。
静かでいて、それでいて何か熱い気配。やがてノックと共に予想通りの声が聞こえた。

「ドナテロ、いいか?」
「…いいよ。レオナルド」

首だけドアに向かせればそこにいるのはドナテロにとって唯一の兄、レオナルド。
夜も大分更けてるというのに、早寝早起きの彼がこんな時間まで起きているなんて珍しい。
それだけ考えるとドナテロはすぐパソコンに向き直りデスクトップのとあるアイコンを
クリックして何かのアプリケーションを展開させる。
そんな様子にレオナルドは益々不安を抱かずにはいられなかった。
そしてイスにゆったりと座るドナテロの傍に近寄るがこちらに反応する気配は無い。
追い返されないだけマシか、レオナルドは思い直してその背中に声をかけた。

「ドナテロ…その…」

口を開いたものの弟に確実に思いを伝えられる妥当な言葉が見つからず、
どもっている兄に構わずマウスをカチカチと動かすドナテロ。その表情はどこか虚ろだ。

「…レオナルドは、さ…」
「ん?」

少しの間が空いた後今度はドナテロが口を開いた。
その声のトーンは元気が無く、次にどんな言葉を投げかけてくるのかと
レオナルドは緊張して待ち構えた。

そして、その問いはあまりに唐突なものだった。


「この姿になって良かったと思う?」


ドナテロはずっと右手で絶え間なくマウスを動かしている。
それは「マインスイーパ」というゲームらしい。
あまり機械に慣れていないレオナルドにとってはその遊び方も動かし方もよくわからず
ミケランジェロにからかわれているのだが、とりあえず敷き詰められた
たくさんのマスの中に埋められている地雷のマスを開けないように
他のマスを開いていくものだとか。
何のためらいも無く地雷の無いマスを展開させていくドナテロは
それを続けながら尚レオナルドに話し続けた。

「もしあの液体を被らなかったら、僕らは普通の亀だった。
 でも僕らはミュータントとなった。ただの亀なんかじゃない。
 亀でありながら言語、思考回路、そのほとんどが人間に近いものを得たんだよ」


レオナルドはドナテロの心の底から何かがあふれ出る気配を感じた。
それは喜怒哀楽などハッキリとした感情ではない、
とてつもなく複雑で不透明なもの。
パソコンの画面から目を逸らすと、机に置いてある写真の人物と目が合った。

(エイプリル……??)

そうか。
お前は……

レオナルドの目線の先に気付いていないドナテロは未だにマウスを
動かしてはカチカチとマスをめくっている。
その姿がとても無機質で、そして声も無感情で…
ドナテロがとてつもない深い闇に沈んでいるのは明確であった。

「だけど、自分が今持ってる感情の意味を考えると苦しくなる。
 こんな事になるくらいだったら僕は…亀のままの方が良かったと思う」


カチリ、とマウスのクリック音が止んだ。
レオナルドが思わず画面に視線を戻すと、地雷のマスを開いてしまっていた。
地雷を一つでも見つけてしまったらアウト。このゲームに失敗したことになる。
ふぅ、とため息をついて震える声でドナテロは最後の言葉を吐き出した。

「馬鹿だよね。最初は憧れてるだけだった。
 なのにどんどんその想いが大きくなっちゃって。
 所詮…僕は亀。
 亀が人間に好意を抱いたところでどうにもならないのに、ね…」


未だ兄に顔を向けず、パソコン画面に向かいクスッと自嘲するドナテロ。
それは明らかに自身をあざけ笑うものだった。
そして、その笑みはとても痛々しくて…
少しの間が空いた後、ようやくレオナルドは口を開いた。



「優しいな、お前は」
「え?」

ドナテロは思わずキョトンとした顔で初めてレオナルドと目線を合わせる。
レオナルドの眼差しは優しくて、だけどとても真剣だった。

「もしオレが彼女を本気で愛したら、きっとケイシーとモメてると思う。
 ラファエロも、ミケランジェロもきっとそうなる。
 だけどドナテロ、お前は想いをそこで食い止めてる。
 むしろ彼女への想いを断ち切ろうとしてるんだろう?」


違うか?と付け足されドナテロはハッとして俯いた。
そもそもいつの間に自分の溜めていた想いをこの兄に話してしまったんだろう。
これは内に秘めておこうとしていたのに…
俯いた頭にぽん、と乗るレオナルドの手。
常に刀を握っている彼の手の平はゴツゴツしていた。
だけどそれを感じた理由に思わず俯いた頭を思い切り上げて反論する。

「こ、子供扱いしないでよ」
「すまない。だけどいつもそうやって自分だけで溜め込んでる。
 ラファエロみたいにサンドバックに八つ当たりしろとまでは言わないけど、
 少しは兄弟に話してくれたっていいじゃないのか?
 こうしてオレに打ち明けてくれたみたいに、さ」


それに…と続けるレオナルドの顔を見上げるドナテロの表情は
まるで父にあやされる子のようであった。
いよいよ父親に似てきたかな、とレオナルドはそう思いながら告げる。

「エイプリルが一番信頼してるのはお前だ。
 誰もがそう思っているさ。だからケイシーも妬くんだろうな。
 お前の気持ちは絶対彼女に届いているよ。だから…もう少しだけ前向きにならないか?
 そんな暗い顔してたら心配されるぞ」


ドナテロの眉間にシワが寄った。
そして目を固く瞑ると閉じられた眼からほろりと雫がこぼれる。
声を荒げることもなく、すすり泣くこともなく、
ただ静かに想いの果てを瞳から溢れさせていた。









「綺麗なお店になったね、エイプリル」
「ええ、みんなのお陰よ。本当にありがとう。
 あ、そうそう早速お願いがあるんだけど…」

「僕にできることなら協力するよ。で、どれを直すの?」

工具一式を背負ってきたドナテロに優しく微笑むエイプリルが指差すそこには
一体どうしたらそうなるのかわからないくらい原型を留めていない
家電製品がテーブルの上に放り投げられていた。
そしてその元凶がテーブルの向こう側で頭を掻きながら立っている。

「そ、その、家具を運ぶのを手伝ってたら間違って踏んじまってよぉ。
 わざと壊したんじゃないんだからな!本当だぜ」

「あー、はいはい。それで本当に修理なんて頼まれたの?
 やっぱりあれって
「ああああっもううるせぇな!!さっさと直してくれ!!」

顔を真っ赤にして怒るケイシーに目もくれずすぐに視線をエイプリルに戻す。
エイプリルも何かを思い出したのか頬を少し赤く染めていたけど、
ドナテロの心が揺さぶられることは無かった。





「ちぇー、ドナテロだけエイプリルのお店に行くなんてズルいなー。
 オイラも行きたかったなぁ」

「お前が行ったところでジャマになるだけだろうが」
「それはそっちじゃないの~?ヤカン頭のラファエロ君」
「ああ?何か言ったか?」

ソファーでDVD鑑賞をしながらぼやくミケランジェロに
サンドバックへ回し蹴りを決めたラファエロが茶々を入れたつもりが
かえってからかわれいつものじゃれ合いが始まっている。
言い合いになっている兄弟の声を背景に、レオナルドは刀の手入れをしていた。
少し強めに目の淵を擦ったドナテロの言葉を思い出しながら。

『前向きに……か。ありがとうレオナルド。
 彼女に会えただけでも僕は幸せなんだよね。
 彼女が笑ってくれてるだけで嬉しかったんだ。それは本当。
 映画みたいなハッピーエンドにはならないかもしれないけど、
 僕は彼女への想いを蔑ろにしない。…ずっとね』


数日ぶりに見せた彼の笑顔はとても穏やかであった。





以下言い訳という名の弁明
すすすすすすみませんなんか湿ってます!除湿機!!
なんだかんだで一番メンタル的にあれこれありそうなのはドナテロかなと思いまして。
あとミュータントである自分の未来図みたいなのも考えていて
ちょっとそこで凹んでるような、頭がいいことは時に悲しい事。
エイプリルに想いを寄せてるけど人間の彼女は人間の男性を愛するだろうと
わかっているだけにケイシーの「オタク亀」に実はこっそり傷ついていそう。
オタクじゃなくて「亀」というのがミソ。オタク?最高の褒め言葉だろうに(笑)
ドナテロを励ませるのはミケかなと思いましたが理屈で納得させるには
長男が頑張るしかないと思いこういう始末。寒色コンビ好きですけど(本心)
なんだか締まってそうで締まってない半端な話で失礼しました!

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