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小噺六『未来』(中)  

※ご注意
この小噺は第3シーズン(日本では未放送)のお話を元に書いております。
しかしあくまで個人的な妄想と捏造に過ぎないのでそれでも構わない方のみ
どうぞ追記からご覧下さい。元の話とは巷で欝EPと有名なアレです。
あと傾向としてはシリアスです。今までの小噺とはシャレになりません。
全三部構成です(こちらは第弐部)つまり無駄に長いのでそちらにもご注意をば。


「夢じゃ…なかったんだ」

ぽつりとミケランジェロは主のいない部屋で呟く。
そしてドナテロがいない事を確認した後すぐに外の世界へと飛び出した。
行き先はきっとガラクタの山に違いないと読んで。
しかしそこにもドナテロの姿は無かった。
あったのは散乱するガラクタと、そして……


彼の武器である棒と、彼が風になびかせていた紫の切れ端。


ドナテロの身に何があったのかなど明白で。
でも自分1人でドナテロを追えばミイラ取りがミイラになる可能性も否定できない。
一旦家に戻り、そして深い眠りについていた兄弟を容赦なく叩き起こし
全てを打ち明けた。そして今に至る。
おぞましい事実に2人の兄もすぐに眠気が吹き飛んだようで、
レオナルドはアゴに手をあてふと呟いた。

「確かに…あれからドナテロの様子はおかしかったよな」
「“あれ”っていつだよ」
「もー!覚えてないのラファエロ!?みんなそれぞれ変な世界に飛ばされた日のことだよ!
 ドナちゃん、チョウチョの世界に行ったって 言ってたけどやっぱりウソだったんだ…」
「そうかもな。あの時の表情は妙に強張っていたし…」

レオナルドは今でも覚えている。ドナテロが自身の見た世界を話していた時の表情を。

『僕?あぁ、蝶さんがたっくさんいる極楽の花畑だったよ。
 幸せだったなぁ、また行けるんなら行きたいぐらい』

声の調子と内容とは裏腹にその笑顔がぎこちなくていつもの彼ではなかったことを。
どうして嘘をついたのか。それは全くわからない。
だけど幼い頃から何かと隠し事をよくする弟だった。
きっと今回も自分達に話すことのできない世界を見たに違いない。
想いを巡らせるレオナルドの思考をラファエロの怒号が遮る。

「とにかく、さっさと探しに行こうぜ!フット団なんかにドナテロを殺されてたまるか」
「ああ。だが行き先がわからないのが苦しいな…」

レオナルドの一言に兄弟全員が一斉に目線を伏せた。
助けたい気持ちはあるのに、次の一手を打つ先がわからない。
ぎり、と拳に力が入り、今にもその拳から血の悔し涙が流れるかも知れない
その刹那、突然機械音が部屋に鳴り響いた。

「キャー!!」
「うるせぇよミケランジェロ!一体これは何だ…?」
「おい、これだ」

レオナルドが指を差したもの、それはドナテロのパソコン。
どうやら電源を落としていなかったようで、節電という形で
真っ黒な画面を維持していたパソコンが動き出した。
思わず駆け寄り地図を凝視する。地図のようだ。

「もしかしてこれってドナちゃんの…?」
「有り得る。自分の身に何かが起きたら位置がわかるような
 機械を身に付けていたのかもしれない」

すぐにミケランジェロがマウスに手を当て場所の確認をした。
そこは郊外の廃ビルのようだ。
フット団が根城にするにはおあつらえ向きだろう。

「ドナテロ…待ってろ、すぐ行く!」

ドナテロが何を見たのか、今も何を見ているのかは全くわからない。
だけど、とてつもない深い闇の海に沈んでいるというのなら、
兄弟全員でお前を引き上げてやるから。


ミケランジェロは壁にかけてあるドナテロの棒に気が付いた。
そして、それを彼と同じように背に差すと既に家を飛び出した
2人の兄の後を追いかけた。




ひんやりとした感触と、誰かの話し声でドナテロは目を覚ました。
まだ麻酔が効いているせいか身体が重く動かせないが視線を配らせ状況を確認する。


どこかの建物のようだがどうもボロい。廃ビルだろうか。
辺りは暗く、まだ意識を失ってからそんなに時間は経っていないようだが
自分が殺されるのも時間の問題だ。更に視線を変えるとうっすらと見える黒い足。
1,2…3人ほどか。

「ようやく目が覚めたか」

しゃがみ込んでいたフットソルジャーと目が合った。
彼は立ち上がると仲間から短刀を受け取りドナテロの首元に当てる。

「紫の亀…ドナテロとかいったな。参謀的存在であるお前を殺し
 他の亀共の動きが鈍ったところを殲滅させるとのシュレッダー様からの提案だ。
 ここで亀肉になってもらおうか」

ヒタリと感じる刃物。恐怖感は無かった。
恐怖を超越した感覚、それは絶望。
どうして30年後の世界に己がいなかったのかわかった気がする。


僕は、ここで死んだんだ。


未来を知ったが故にそれに心を縛られ、真実を探求している内に真実に殺されたのだ。
そして亡骸は海にでも捨てられた。だから蒸発したと思われたのだと。
1人で行動し、しかも辺りへの警戒も解いてしまったのが原因だ。
その為に命を落とすのならば自業自得というもの。
死でそれを教えられてももう遅い。自分がいなくなることによって
家族の絆は切り裂かれ、そして『あの未来』に繋がる……


そこでドナテロの思考はピタリと止まった。


『あの未来』に繋がる、って…?


拳に力が入る。ゆっくりと、だがじわりと握り締める力が。
あんなのはもう嫌だ。
レオナルドの光が失われた両目を覆う漆黒のサングラス。
ラファエロの紅いバンダナに縫われた左眼の痛々しい傷跡。
ミケランジェロの亡き腕の先端にあった無機質な金属。
スプリンターの名が刻まれた静かに佇む墓標。
ケイシーが穏やかに笑う、でももうそこに魂は無い遺影。
エイプリルとエンジェルの悲しそうな瞳。


あ ん な 未 来 は 認 め な い


力強く腕を振るうとブン、と短刀を突きつけていた腕を退け払うことができた。
麻酔によって動きが鈍っていたはずの腕が急に力を取り戻したようだ。
いきなりの動作にフットソルジャーはひるみ、その隙に足払いをかけ
フットソルジャーの手から零れ落ちた短刀を拾い上げる。
流石にここまで力が戻るなんて火事場の何とか力だろうとドナテロは思いながら
その場にいたフットソルジャーに正拳突きをおみまいし、動かなくなったのを
見計らって部屋の戸を荒々しく開け逃げ出した。


腕に付けていた小型発信機を気絶する直前に作動させられたのが幸いだった。
もし兄弟が奇跡的にも自分のパソコンに気付いてくれていたら
この廃ビルへ向かっているかもしれない、そう信じて。
場所も地形も全くわからないこの廃ビル、フットソルジャーだけでなくシュレッダーも
潜伏しているかもしれないこの場所からどうにか退却しなければ。
いくら身体が少し調子を取り戻したとはいえ本調子ではない。
先ほど割れたガラスから外の景色を見るにここは7,8階建て。


気配を察知しながら走るが、感じるフットソルジャーの数は少ないようだ。
しかしいつ先ほどの連中が目を覚まし追ってくるか…


(レオナルド、ラファエロ、ミケランジェロ…)


僕は、生きたい。
あんな未来、打ち壊したい。
みんなでおじいちゃんになるまで一緒に過ごしたいんだ。

(中編・了)

category: 風息(亀忍者)

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